アンデルセン作の絵のない絵本。
アンデルセンといえば、「みにくいあひるの子」や「マッチ売りの少女」を書いたことでも有名な作家だ。
アンデルセンの紡ぐ物語は、全体的に儚い。
悲しさを表現することに本当に長けた作家だろう。
それは、彼自身の生い立ちの影響しているところがあるのだろう。
生まれは貧しく、舞台俳優を目指して挫折も経験する。
小説の中に彼自身のことを書いてるのではないかと思うような箇所もある。
引用
「この才能のない男は芸術の国では、気に入られなかったのです。この男は深い感情を持っているし、また感激をもって芸術を愛しもしましたが、芸術のほうでこの男を愛さなかったのです。」
アンデルセンの書く悲しい物語は、胸をかきむしるような悲痛な悲しさではない。
なにか、清く美しく儚い、
虚無感や淋しさを感じるような、
沈黙するような悲しさ。
激しくない、静かな、それでもって、しみる悲しさだ。
そして、全くもって救われない悲しみの結末が多い。
後に尾をひく悲しみ。
悲しみにも色々あるということがわかる作品であり作家だ。
もしアンデルセンが中途半端に舞台俳優として成功していたら、このように150年以上たった今も読まれ継がれる芸術作品を遺すことにならなかっただろう。
人生とは不思議だ、と思う。
YOERU.